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試行錯誤。トラック・シートもこのありさま

05 Balloon
作詞 / 作曲:前園直樹
編曲:前園直樹・佐藤勝紀

ヴォーカル / 演奏:前園直樹
ゲスト・ヴォーカル:吉田まさこ
プロデュース:前園直樹
共同プロデュース:佐藤勝紀
プログラミング:佐藤勝紀
初回録音:2000年7月(*初出:自主制作盤『ORANGE BIKEの世界』)
再録音:2001年7月

先にお聴きいただきたいのが、自主制作盤『ORANGE BIKEの世界』に収録されていた「(旧)Balloon」の音源。
この映像は、ぼくの茨城県桂村でのくらし* ぶりを紹介するため、2003年春に所属レコード会社が制作した販促用のもの。
この映像で「(旧)Balloon」が使用されていました。

*『くらしのたより』発表後、2002年からの約3年、水戸から人里離れたこの山村で生活しながら活動していました

『くらしのたより』収録の「(新)Balloon」レコーディングの顛末については、先にアップしたぼくのインタヴューで、このように話していました。

「BALLOON」なんかは、さっき話したいちばん最初のテープ(『ORANGE BIKE』)の時からやってて、その後『ORANGE BIKEの世界』でもひとりでリメイクしたんだけど、『くらしのたより』では、ぼくのアイデアだけではできない、まったく違う感じになった。

コードとコーラス・アレンジだけはほとんどそのままにして、ハウスとかダブの浮遊感とかループ感を参考にしてトラックをまったく違うものに作り替えたんだけど、それは完全に佐藤さん発信のアイデアだった。

「(新)Balloon」のレコーディングにとりかかる前に、佐藤さんの部屋で、大量で、内容も実に多岐にわたるレコードを聴かせてもらう機会を得ました。
そこでふたりで話したのは、具体的なサウンドやアレンジを取り入れよう、というよりは、あるレコードから得られる印象(感動や感情)を、じぶんたちなりの形で出そう、といった主旨の内容でした。

その時に聴いた、と記憶しているものを、いくつか挙げておきましょう。

ひとりで音を重ねる行為を続けていると、どうしても<行為>の<過程>に溺れて<結果>すなわち音楽を見失う場面がありました。

ぼくにとって、「(新)Balloon」のレコーディングと、その前の大試聴会は、レコーディングに対する考え方、音楽の捉え方を見直す絶好の機会になりました。


トラック4の2階層目<synthe bass> 、5の1<bass(fender jazz bass)>
『くらしのたより』では、ほとんどの曲のベースを MONO / POLY で、
あるいは MONO / POLY と手弾きのベースのダブル(ユニゾン)で録音しました

06 にがいぬくもり / Bitter Warmth

作詞 / 作曲:前園直樹
編曲:前園直樹

ヴォーカル / 演奏:前園直樹
プロデュース:前園直樹
録音:2000年3月(*初出=自主制作盤『ORANGE BIKEの世界』)

「Lime Light」などと同様、『くらしのたより』再収録にあたり、ミックス・エンジニアの千葉昭夫さんによる再ミックスが施されています。

遠くにかすんで聴こえる雨音は、ある雨の日にアパートの部屋の窓を開け放って、じっさいに録音したもの。
当時はコンデンサ・マイクを所有しておらず、SHUREのダイナミック・マイクで集音に試みるも予想以上に難しく、相当に雨脚の強い日を待って録音したことを憶えています。
キラキラッという音がどこかで聴こえるかと思いますが、当日は風も強く、大きく揺れた風鈴の音も拾ってしまいました。入り込んだ雨で部屋の窓際はずぶ濡れ。そんなこともつい思い出してしまいます。

フランスのシンガー・ソングライター、マチュー・ボガート Mathieu Boogaerts が、この頃のヒーローでした。発する言葉は判らないけれど、一筋縄ではいかない雰囲気が音から痛いほど伝わってくるような。大学で、フランス文学を専攻したのは、彼の影響もあったかもしれません。

彼のファースト・アルバム『Super』を知ったのは1996年、高校3年の時。先述のラジオ番組『カヒミ・カリィのミュージック・パイロット』において、でした。
本国では前年にリリースされたものが日本盤でリリースされる、というので、鹿児島市のタワー・レコードまで買いに行った記憶があります。

「にがいぬくもり」との強い相関性はありませんが、例えば。

そしていちばん好きな曲はこれ。
いまに至るまでアルバム単位でのアナログ化がなされていないのが不思議。そう思うのはぼくだけでしょうか?

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『くらしのたより』の特集。目次